2023年7月1日、中国は「対外関係法」を施行した。
この法律は、中国と他国との関係において様々な問題やリスクを引き起こす可能性がある。特に日本と中国との関係においては、以下のような懸念点が挙げられる。
懸念点1:報復や制限措置の恣意的な適用
「中国の主権、安全、発展の利益を脅かす行為」に対して、「相応の報復・制限措置をとる」と規定されているが、この「脅かす行為」が抽象的で、中国当局が自由に解釈することができ、「相応の報復や制限措置」が恣意的な適用されるおそれがある。特に、台湾問題などで日本が中国と異なる立場を表明するだけで、法の適用範囲となる可能性がある。
懸念点2:日中間の信頼関係や協力関係の損傷
1のようなおそれは、他国との信頼関係や協力関係を損傷することにもなりかねない。特に日本と中国との関係においては、両国は経済を始めとする様々な分野で密接に結びついており、両国間の対話や交流が重要であるが、日本側は中国側から不当な報復や制限措置を受けるリスクを感じるようになり、両国間の対話や交流が冷え込む可能性がある。
では、日中関係を良くするためにはどうすればよいか。私は以下のような視点から考えてみたい。
視点1:法的解釈の明確化に努める
対外関係法において、中国当局による恣意的な運用は排除するため、引き続き、法的解釈について明確化するように求めていく必要がある。その中では、国際法や国際関係の基本準則を尊重し、互いに尊重と信頼をもって対話を行うべきだ。
視点2:多様性と相互理解
日中関係を良くするためには、多様性の理解が必要だ。両国には、文化や社会で異なる部分は多いが、それらを尊重しつつ、両国が対立する場合でも、それらが感情的な対立に発展しないように注意し、冷静かつ建設的に対話することが重要である。また、両国は、政府間だけでなく、民間レベルでも積極的に交流を行い、相互理解を深めることが重要である。
視点3:第三国との連携
第三者との連携を強化することが必要である。第三国と連携することで、日中二国間だけの問題とするのではなく、国際社会の中で、中国の自制を求めていくことが重要である。
よく言われるように、日中両国は「引っ越しのできない隣人」であり、関係が悪いよりは、良好であるほうが、国際社会にとってもメリットが大きいはずである。「対外関係法」のリスクは十分に考慮しつつ、萎縮しすぎずに、“言うべきことは言う”関係を作り上げることが重要であろう。